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“このままでいいのか” —安定を捨てた会計士が夫婦で世界一周をして見つけた生き方”

会計士として安定したキャリアを歩んでいた。京都大学で会計の資格を取得し、コンサルティングファームに勤務する。世間では「正解」と言われるような人生設計が整っていた。しかし心の奥底には常にモヤモヤした違和感があった。もっと広い世界を見たい。このままの人生で本当に幸せになれるのか。そうした問いかけを抱えながらも、仕事に忙殺されていく日々。やがて妻もブラック企業での勤務に疲弊していた。32歳を目前にしたとき、ついに私たちは決断した。すべてを手放して、1年間の世界一周の旅に出たのだ。
「今行かないと、もう行けない」という切実な想い

大学時代から世界一周の夢は心にあった。しかし社会人になると、その夢は仕事の波に埋もれていく。生活の安定に甘えながらも、どこかモヤモヤした感覚は消えない。転機は仕事を辞めるタイミングに訪れた。その時、私たちはようやく気づいた。「今行かないと、仮に行けたとしても、もう行けないかもしれない」と。
子どもが生まれれば、家を買えばローンが背中に乗る。責任が増えるたびに、夢を実現する自由度は失われていく。30年後に「やっぱり行きたかった」と後悔する人生を送るのか、それとも「今、ここで決める」のか。夫婦で何度も話し合った。妻がブラック企業を辞めたいと言ったことも、実は不思議な後押しになった。もしあのとき妻が会社を続けていたら、私たちは実行しなかったかもしれない。人生の選択は、時に思わぬ出来事によって形作られていく。
セブ島での3ヶ月——英語学習から始まった物語

セブ島での最初の3ヶ月間は、旅の準備期間だった。英語学校に通い、旅を充実させるための言語を学んだ。当時、私たちはこの経験が後に大きな意味を持つとは思いもしなかった。ただ旅を最大限に楽しむため、必死に勉強していたのだ。
その後、私たちは東南アジア、インド、ヨーロッパ、アメリカと世界を巡った。約1年間の総旅程は、単なる観光ではなく、人生観を揺さぶる無数の出会いに満ちていた。
旅で見つけた「自由に生きる人たち」

世界を旅していて気づいたことがある。自由に生きている人は、想像以上にたくさんいた。赤ちゃんを連れて世界を回るドイツ人の夫婦。旅をしながら事業を立ち上げる人たち。その土地その土地で自分たちなりの生き方を選んでいる人ばかり。
特に印象的だったのは、インドへの旅での会話だ。赤ちゃん連れでインドなんて大変では、と思っていた私たちに、その家族はこう言った。「いや、今の方が楽なんだよ」と。そのとき初めて理解した。「こういう生き方は確かに存在するんだ」「私たちにだってできるんじゃないか」と。世間常識だと思っていた「正解」が、実は一つの選択肢に過ぎないことを、初めて腑に落とした瞬間だった。
マレーシアの大富豪から学んだ、お金の本質

妻にとって、最も心が変わった出会いがある。マレーシアのマラッカで出会った大富豪だ。プライベートジェットで移動するほどの富を持つ人物が、バックパッカーの宿に泊まっていた。そして妻にこう語った。
「5つ星ホテルに泊まろうが、どこで過ごそうが、もう変わらないんだよね。君たちが食べているこの食堂の100円のご飯の方が、うんと美味しいよ」と。
それまで妻は、漠然とお金を稼がなければ、という強迫観念に駆られていた。しかしその言葉で何かが解放された。いくら持っていても一緒なのか。だったらお金は私の人生の軸ではなくていい。好きでもないことをしてお金を稼ぎ続ける人生ではなく、別の選択肢があってもいい。そう気づけたことで、心の重しが一つ消えた。
旅の中で確信した「好きな場所で、好きな人と、好きなことを」

旅を続ける中で、私たち夫婦が確信したことがある。「好きな場所で、好きな人と、好きなことをしよう」ということだ。その想いを形にするために、私たちはセブ島でクロスロードという英語学校を立ち上げることになった。
興味深いことに、この決断は「計画」ではなく「偶然」から生まれた。私がキャリアコンサルタントの資格を持っていたことも、その知識が今役立っているわけではない。むしろ心に残っているのは、大学で学んだ「クルンボルツ教授の計画された偶発性理論」(プランハプテンスセオリー)という考え方だ。人生の大きな方向性の大多数は、綿密な計画ではなく、偶然の出会いから生まれるという理論である。そして重要なのは、その偶然は「動いた人にしか起きない」という点だ。
人生の選択肢は、一歩踏み出した先にしか見えない

私たちが今セブ島にいるのは、世界旅行に出たからこそ。セブ島で最初に留学したからこそ。無数の出会いがあったからこそ。それらが全て偶然のように、そして必然のように重なり合って、今この場所へたどり着いた。
そこから見えてくることがある。人生やキャリアの大きな方向性は、今いる場所から一歩を踏み出さないと見えてこないのだ。新しい世界に出て、いろんな人と出会い、刺激を受ける。その中で新しい選択肢が生まれ、経験と感情が重なって、初めて次の世界への一歩が踏み出せる。
これは特別な人の話ではない。普通の夫婦でもできた。大事なのは、その「タイミングで決意する」という一点に尽きる。世間的な正解ではなく、自分たち自身の人生を問い直し、そこから一歩を踏み出す勇気。許可を出すのは誰でもない。自分たち自身だけなのだ。
あなたは今、新しい世界への旅をしているだろうか。心の奥底にモヤモヤがあるなら、それはあなたを次の世界へ呼んでいるサインかもしれない。




